【特集】福祉のお仕事 京都の産業紹介 〜福祉業界〜
福祉業界というと、なんとなくイメージできている人も多いと思いますが、実際のところまだまだ若いみなさんにとって、福祉の仕事を目指している人以外はどこか他人ごとのように感じている人も多いのではないでしょうか?
しかし、やがて結婚・出産となれば、子育てすることになりますし、核家族で高齢化が進む社会においては両親の介護の問題に直面するなど、いずれ他人ごとではなくなる、ごく身近な産業の一つといえます。
今回の特集では、そんな誰にとっても無関係ではいられない介護のお仕事について取り上げます。
福祉のお仕事とその魅力
一言で福祉のお仕事といっても、様々な仕事があります。大きく分けると右ページのような分野に分けられ、職種も職場も様々ですが、どの分野において共通するところがあります。
誰かのサポートを必要しているところに必要な支援を行うことが福祉のお仕事です。
そういうことを仕事にするには、どういう人が向いているのか、またどういう心構えが必要なのか、京都府福祉人材・研修センター所長の山崎正則さんにお話を伺いました。
福祉のお仕事とは?
人々の生活や暮らしを支える仕事が福祉の仕事といえると思います。「人間誰しも一人では生きられない。」といわれています。
社会生活を営むうえで、協力し助け合うことが福祉の仕事の基本の考え方だと思います。
福祉業界に求められている人材
まず、人に関心があることが大切です。必ずしも高いコミュニケーション能力が必要とはいえませんが、職員同士、利用者やその家族などとの関わりが持てる協調性は大切だと思います。そのうえで、創意工夫する力や的確な判断力などは経験を通じて身に着けていただきたいと思います。
福祉業界で働くことの魅力・やりがい
一番の魅力・やりがいは、人(人間)を相手にする仕事ですので、仕事を通じて、その人の生活や暮らしを支えていることが実感できることだと思います。利用者との出会いや別れ、成長を見守れることは自分の人間性を豊かにしてくれることになるでしょう。
京都の福祉業界のこれから
京都府では全国に先駆けて、安心して長く働ける職場として「きょうと福祉人材育成認証制度」に取り組んでいます。この制度が人材育成や定着に取り組んでいる証となります。それ以外にも、様々な事業所が工夫をしながら利用者支援を行っていますので、お互いの良い取組を紹介し合える情報の共有化や発信なども大切だと思います。
京都の若者へのメッセージ
仕事を通じて、人との関わりの中で自己成長が実感できるのが福祉業界だと思います。身近な地域に様々な福祉の仕事がありますので、自分のライフスタイルに合った職場を選んでください。
具体的には、高齢、障がい、児童などの分野、入所施設、通所、訪問などのサービス提供方法などから自分の関心があるところを選んでいただきたいと思います。きっと、あなたに適した職場が見つかりますよ。
社会福祉法人京都府社会福祉協議会
京都府福祉人材・研修センター
所長 山崎 正則さん
高齢者福祉分野
高齢者が安心して暮らせる生活を支える
お年寄りの方を対象とする福祉の分野です。WHO(世界保健機関)では65歳以上のお年寄りを「高齢者」と規定しており、日本でも65歳から74歳までを「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」として、お年寄りの方が心とからだの健康を保ちながら、安心して暮らし続けることができるよう、様々な福祉サービスが行われています。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設、デイサービスセンターなどの施設での仕事の他、利用者の自宅を直接訪問する訪問介護の仕事などがあります。
平成12年(2000)には介護を必要とする高齢者を社会全体で支えていくことを目的に介護保険制度が導入され、約4人に1人が65歳以上という超高齢化社会の日本では、現在最も人材が必要とされている分野です。
障がい児・者福祉分野
障がい者の可能性を信じてサポートする
体や心などに障がいがある方を対象とする福祉の分野です。身体、知的発達、精神に障がいを持つ人々が、地域の一員として、日常生活・社会生活を送れるよう、様々な支援を行う福祉サービスを提供しています。
生活介護施設や障がい児入所施設、就労継続訓練施設などでの仕事のほか、昼間は就労継続支援や生活介護などの支援を受けている人が、夜間や休日に共同で生活しているケアホーム・グループホームなどでの仕事があります。
平成18年(2006)に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」を受け、日本でも平成23年(2011)に「障害者基本法」が改正されるなど法整備が進み、障がいのある方の権利擁護と社会参加機会拡大のため、自立支援などの様々な施策が総合的に進められています。
児童福祉分野
子どもに寄り添い未来を育む環境を作る
児童を対象とする福祉の分野です。児童福祉法では18歳未満の乳児、幼児、少年を「児童」と定義していますが、制度によっては20歳未満など「児童」に含まれる対象が異なります。
保育所(保育園)や児童館、助産施設のほか、何らかの要因で保護者との生活が困難な児童を養育する児童養護施設や乳児院などでの仕事があります。
児童福祉の基本法である「児童福祉法」に基づき様々な福祉サービスが行われていますが、近年では少子化対策や児童虐待防止など児童に関わる重大な社会問題への対応が求められるようになり、平成28年(2016)には児童福祉法が大きく改正されました。それにより、子育て世代包括支援センターの設置や児童相談所の体制強化など新しい施策も増え、ますます児童福祉分野の仕事の重要性が高まっています。
その他の分野
上記の3種の分野以外にも福祉に関連する仕事があります
参考図書紹介
福祉がわかるシリーズ 2
3つの福祉とは?
子ども・お年寄り・障がい者
今から知っておきたい「福祉」の話。福祉ってなに?どうして大事なの?福祉のおもな3つの分野を解説。
受けられるサービスや問題についても紹介。
著者:池上 彰(監修)、稲葉 茂勝(著)
出版:ミネルヴァ書房
介護系のお仕事 〜ケアワーク〜
高齢者や心身に障がいのある方の介護を行う仕事です。
主に身体面の介護を中心に行い、食事や入浴、排せつ、衣服の着脱や移動など、日常生活の全般にわたって必要な援助を行います。
単に身の回りの世話をするというだけではなく、利用者の日常生活の自立を支援するということを念頭におき、本人やその家族とも相談しながら、利用者の目標達成を支援していくことも仕事です。
利用者と直に接する仕事のため、利用者やそのご家族から直接感謝されることも多いのが、介護系のお仕事のやりがいにつながっています。
職種(一部)
ケアワーカー(介護職員・介助員)
介護施設などに入所している利用者に対して、衣服の着脱や入浴、食事など日常生活全般の援助を直接行う仕事で、介護系のお仕事の中心を担う職種です。また、利用者の散歩や買い物を援助したり、行事やレクリエーションの実施や、利用者の家族に介護方法のアドバイスを行うことも仕事の一つです。
訪問介護職員(ホームヘルパー)
在宅の高齢者や障がい者宅に訪問して介護サービスや生活援助サービスを提供する職種で、介護保険制度や障がい者自立支援法等にもとづいて運営されています。利用者本人やその家族への精神的ケアを行ったり、家族へ介護の技術的な指導を行うことも大切な仕事となっています。
資格(一部)
介護福祉士
介護の専門知識と技術を有する国家資格で介護系のお仕事を代表する資格の一つです。名称独占資格になりますので、資格を持っていないと介護福祉士を名乗れません。日常生活に支障がある人の介護を行うだけではなく、利用者やその介護者に対して介護に関する指導も行います。
受験資格として3年間の実務経験と実務者研修の修了が義務づけられています。
介護職員初任者研修
介護職として働くうえで基本となる知識・技術を習得する研修資格になります。9科目130時間の研修受講と全課程修了後の修了試験に合格する必要があります。介護職未経験でも研修を受講することができますので、これから介護の仕事を始める人のための資格ともいえます。
実務者研修
介護に関するより専門的な知識と技術を習得する研修資格になります。20科目450時間の研修受講と修了合格で取得できます。
介護福祉士の受験資格にもなっています。
介護系のお仕事 介護系の職場
介護系の職場
特別養護老人ホーム
寝たきりや認知症などの常時介護が必要な高齢者が家庭での介護が困難な場合に入所し生活をする施設です。
ホームヘルプ事業
在宅の高齢者や障がい者宅を訪問して、介護サービスや家事援助サービスを提供するホームヘルプ事業の第一線です。
介護老人保健施設
家庭での生活復帰を目的に一定期間入所して、介護、リハビリなどの機能訓練や日常生活の支援を受けるための施設です。
介護療養型医療施設
介護が必要な人が医学的な管理に基づく長期の療養を行うための施設です。介護職員が多く配置されています。
デイサービスセンター
65歳以上で、日常生活に支障がある人などが日中通い、入浴や食事、機能訓練などを提供することを目的とする施設です。
訪問入浴事業
自宅で入浴が困難な方に、スタッフが専用の浴槽を自宅に持ち込み入浴をサポートする介護サービスです。
データで見る介護業界の将来
少子高齢化が進み、2065年には日本の人口の約4割は高齢者になると推定されています。それに伴い要介護・要支援の認定者数も年々増加し、2030年には2000年の3倍になると予想されています。しかし、逆に言うと介護業界はこれからの成長産業ともいえます。そこで働く介護職員は今後ますます必要とされていくでしょう。
保育系のお仕事 チャイルドケア
子どもの保育・療育を行う仕事です。
子どもたちに食べる、眠る、排せつするといった基本的な生活習慣を身につけさせるとともに、遊びの面から集団活動や社会性を育てることが主な仕事になります。また保護者の方へ子育てについてのアドバイスを行うことも大切な役割の一つです。
時に子どもの命を預かることになる大変責任の重い仕事ですが、子どもの成長を間近で感じられたり、子どもからの笑顔や向けられる信頼など、日々の関わりの中で得られる子どもとの絆は、仕事の大変さを上回る大きさのやりがいとなって返ってきます。
職種(一部)
保育所(保育園)
保護者が働いているなど何らかの理由によって保育を必要とする乳幼児を預かり、保育することを目的とする施設です。
認定こども園
幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能をあわせ持ち、地域の事情や保護者の要請により、必要な子育て支援事業を行う施設です。
児童養護施設・乳児院
児童養護施設とは、生まれた家庭で生活することが困難と判断された児童が入所する施設。乳児院は1歳未満の子どものための施設です。
資格(一部)
保育士
保育士は、児童の保育を行ったり、児童の保護者に対して保育に関する指導を行う専門職の国家資格で、児童福祉法第十八条に規定されている名称独占資格になります。(資格を持っていないと保育士を名乗れません)
保育所で働くには保育士の国家資格が必要です。
児童指導員任用資格
児童養護施設や児童相談所などの児童福祉施設にて、子どもたちが社会の一員として自立した生活を送ることができるように、日々の生活を指導・援助する児童福祉の専門員が児童指導員です。その任用に伴って求められる任用資格(基準を満たしているかどうかを判断するもの)です。
豆知識:保育所と幼稚園って、何が違うの?
ひとことで言うと、保育所は児童福祉施設で、幼稚園は教育施設です。
保育所は児童福祉が目的ですので、児童福祉法に基づき厚生労働省が管轄しています。(ちなみに児童福祉法では「保育所」が正式名称です)幼稚園は教育目的で設置されていますので、学校教育法に基づき文部科学省が管轄しています。保育所と幼稚園では、保育対象年齢や標準的な保育時間も異なります。保護者の就労状況に合わせて保育所の方が保育時間が長く、0才から保育可能です。一方、幼稚園は保育時間が短く、通常3才もしくは4才の春からの入園となります。最近では、保育所と幼稚園の両方の良さを併せ持っている「認定こども園」という幼保一体型施設もあります。こちらは平成18年(2006)に制定された「就学前の子どもに関する教育・保育等の総合的な提供の推進に関する法律」を根拠に都道府県知事が条例に基づいて認定しています。
相談・援助・調整系のお仕事 ソーシャルワーカー
高齢者や障がい者、病気のある方や、子どもとその家族など、福祉を必要とする人たちの悩みや相談に乗り、一緒に考えたり、アドバイスしたりするなど、精神的なサポートを行います。また福祉サービスを必要とする人に適切な福祉サービスや施設を紹介したり、それら福祉サービスの提供者と利用者、あるいは関係者間の連絡や調整を行うのが主な仕事で、ソーシャルワーカーやケースワーカーなどと呼ばれることもあります。
職種(一部)
ケアマネージャー(介護支援専門員)
生活支援員・生活相談員
作業指導員
児童指導員
就業指導員
要介護者・要支援者からの相談に応じ心身の状況に合わせた適切な介護やサービス利用ができるよう、市町村や居宅サービス事務所、介護保険施設との調整やケアプランの作成など行います。
資格(一部)
社会福祉士
ケアマネージャー(介護支援専門員)
児童指導員任用資格
社会福祉主事任用資格
精神保健福祉士
社会福祉専門職の国家資格です。ハンディキャップのある人からの相談や、福祉サービス提供者などと連携・調整を行い日常生活がスムーズに営めるようにサポートします。
保健・医療系のお仕事
看護職や理学療法士など専門職に分かれ、それぞれ施設利用者の健康管理や衛生管理、医療的なケアを行ったり、身体の障がいの機能回復や、リハビリテーションの手助けなどを行っています。
職種:看護師 作業療法士 理学療法士義肢装具士 臨床心理士 など
栄養・調理系のお仕事
施設利用者が健康的な食生活が送れるように、献立の作成や食材の発注など日常の食事を支える仕事のほか、調理員への指導、給食施設の衛生管理なども行っています。
職種:管理栄養士 栄養士 調理員 など
運営・管理系のお仕事
事務や経理など施設を管理・運営する仕事です。
職種:事務職員 施設長 など
行政系のお仕事
行政(地方自治体)の福祉部局や社会福祉協議会の職員など、福祉の仕事を支えたり、広げたりするための仕事です。